
コロナ禍が与えた投資判断の歪み。バフェットの航空業界への投資とその撤退
ウォーレン・バフェットと航空業界: 一見すると相反する二つの存在
投資の世界に名を馳せるウォーレン・バフェット。その彼が、かつて自身を「エアロホリック」と称したほど航空株に深い関与を持つとは、多くの投資家にとって驚きでしょう。なぜなら、航空業界は競争が激しく、利益率が低い上に燃料費などのコストの変動が大きい、困難な投資先とされてきたからです。
しかしながら、バフェットの投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイは2016年、アメリカの主要航空会社4社、すなわちデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウエスト航空の株を買い占めるという大胆な投資を行いました。その結果、バークシャー・ハサウェイは航空業界で大きな影響力を持つに至ったのです。
2020年、航空業界で起きたこと
しかし、この航空業界への投資は、2020年に突如壁にぶつかります。新型コロナウイルスのパンデミックは航空業界に甚大な影響を及ぼし、株価は急落。バークシャー・ハサウェイは同年5月に所有していた全航空会社株を売却、7-8兆ドルもの巨額の資金を投入した投資は水の泡と化しました。これがバークシャー・ハサウェイの2020年第一四半期の500億ドルの巨額損失につながりました。
その結果、航空業界という困難なフィールドで成功を収めることは不可能であると一部からは囁かれました。しかし、予測を覆すように航空業界の株価はV字回復。アメリカン航空とサウスウエスト航空は2020年5月25日の底値から80%以上上昇し、ユナイテッド航空とデルタ航空の株価もそれぞれ77%と69%上昇しました。これにより、バフェットとバークシャー・ハサウェイが航空業界から撤退したことが、逆に大きな機会損失を生んでしまったのです。
バフェットの投資戦略と航空業界への投資
バフェットの投資哲学は、「価格が何であれ、価値を理解し、それに基づいて投資する」というものです。また、「十分な安全余地を持つ」という考えも強く押し出しています。それでは、バフェットがこれらの原則に基づいて航空業界に投資したのはなぜでしょうか。
答えの一つは、バフェットが航空業界の「価値」を見出したからです。彼は業界の構造変化に注目しました。かつては分散化していた航空業界は、合併と再編を経て四つの大手キャリアに集約され、競争状況が改善されました。また、航空機の効率性が高まり、航空会社の利益率も上昇。これにより、バフェットは航空業界に新たな「価値」を見出したのです。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックは予見できない事象であり、その影響は業界全体に及びました。バフェットが航空業界から撤退したのは、この予見できないリスクを避けるためであると考えられます。この撤退は彼の投資戦略における「安全余地」の考えに基づくものであると考えることができます。
結論
ウォーレン・バフェットの航空業界への投資とその後の撤退は、投資の難しさとその不確実性を示しています。同時に、これらは市場の変化と投資家の判断力、そして投資哲学の重要性をも示しています。バフェットが航空業界から手を引いたことで、彼の投資原則が揺らいだわけではありません。逆に、彼の原則に基づいて行動した結果だと言えるでしょう。この事例から、投資は予見できないリスクを含むものであり、そのリスク管理が重要であることを学ぶことができます。
投稿日:2024-01-19
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