
世界を揺さぶったブレトン・ウッズ体制の崩壊:金融市場が目撃した歴史的転換点

山田利光
大戦から生まれる新たな秩序
1944年、人類が二度目の世界大戦の苦痛から立ち上がろうとした時、人々の心には経済再建への強い意志がありました。そんな時、ブレトン・ウッズで行われた会議によって、新たな金融体制「ブレトン・ウッズ体制」が誕生しました。この制度は、深い悲劇とともに学んだ世界恐慌の教訓と、戦後復興への切なる願いを結びつけるための架け橋でした。しかし、それが約25年後、1971年に崩れ去り、金融市場は新たな混乱の渦に巻き込まれることとなりました。
ブレトン・ウッズ体制の出現
世界恐慌の影響を鮮烈に記憶していた人々は、ブレトン・ウッズ体制を創設しました。これは金とドルの交換比率を固定し、通貨の安定化と国際貿易の活性化を図るというものでした。そして、その中心に立ったのは、戦後の世界をリードする力を持ったアメリカドルでした。この新制度、「金・ドル本位制」は、戦後の経済再建という難問に立ち向かうための戦略的な解答を提示したのです。
体制の裏側に見え隠れする問題点
しかし、復興期の経済活動に伴い、通貨流通量が増加する一方で、金の供給量は一定であるという現実は矛盾をはらんでいました。金の供給量が固定されているのに対し、経済活動が拡大し続けることで、ドルと金の交換比率は揺らぎ、ブレトン・ウッズ体制の限界が顕在化し始めました。
「ニクソンショック」がもたらす混乱
この矛盾が一気に表面化したのは、1971年のことでした。当時のニクソン大統領が金とドルの交換停止を宣言したことにより、金融市場は混乱の渦に巻き込まれました。これは「ドルショック」または「ニクソンショック」と呼ばれ、世界中の通貨の価値に大きな影響を与え、混乱の度合いを増幅させました。

混乱から新たな秩序へ:変動相場制の誕生
しかし、この大混乱が拓く新たな道は、まったく新しい金融体制でした。「変動相場制」というこの新体制は、各国の通貨価値が市場の需要と供給によって自由に変動するもので、経済環境の変化に対応できる柔軟性を持っています。この変動相場制の登場によって、新たな均衡が生まれ、より安定した経済環境が実現されました。
金融体制の進化の歴史
金融市場の歴史は、常に変化と進化の繰り返しです。世界恐慌、第二次世界大戦、そして戦後復興。これらの混乱の波を越えて、我々はブレトン・ウッズ体制の創設、その崩壊、そして変動相場制への移行を経験しました。各時代が自らの最善策を示し、それが市場の調整機能を表現しています。現在の我々が目の当たりにしている経済環境は、こうした歴史的な変遷を経て形成されたものなのです。
投稿日:2024-01-27
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