レイ・ダリオが設計したオールウェザーポートフォリオは、文字通り「全天候型」投資戦略という意味を持つこの名前に相応しく、我々が経鎖的に直面する様々な景気変動に対応する能力を持つ、まさに一握りの投資戦略の1つといえるでしょう。

このオールウェザーポートフォリオのコンセプトは、投資家があらゆる市況、つまり経済成長期でもリセッション（不況）でも安定的なリターンを得られるように、様々な資産クラスに分散投資をすることにあります。これらの資産クラスには、株式、長期債券、短期債券、金、そして商品が含まれます。

この戦略は、リスク対策として一つの資産クラスに過度に依存することを避けるためのものであり、その代わりに資産間のバランスを取ることで、経済の波乱含みの航海に対する「船酔い」を抑えることを目指しています。

オールウェザーポートフォリオ：その資産配分と戦略の核心

ダリオのオールウェザーポートフォリオにおける基本的な資産配分は以下の通りですが、各投資家の具体的なリスク許容度や投資目標により、必要に応じて微調整することが推奨されます。

• 株式：30-40%

• 長期債券：15-40%

• 短期債券：15-40%

• 金：7.5-10%

• コモディティ：7.5-15%

ただし、資産配分だけを考えるのではなく、戦略全体を理解し適用することが重要です。それには、資産クラスの多様化、定期的なリバランス（バランス調整）、流動性の高い資産の保有、そして投資手法のシステマティック（体系的）な採用が含まれます。

オールウェザーポートフォリオ：その魅力とリスク

オールウェザーポートフォリオは、その特性から様々な利点をもたらします。その一方で、リスクも含まれているため、投資家はこれらを理解し、自身の投資戦略に適切に組み入れることが重要となります。

利点、

• リターンの安定性：この戦略は、経済成長期でもリセッションでも安定したリターンを提供することを目指しています。

• リスク分散：様々な資産クラスに投資することでリスクを分散させることが可能です。

• 明確な戦略：この投資戦略の理論的な背景は明確であり、初心者投資家でも理解しやすいです。

一方、リスクや課題も存在します、

• リターンの制限：リスクを抑えるための資産分散により、最大限のリターンを目指す戦略と比べるとリターンが制限される可能性があります。

• 市場状況の影響：極端な市場環境下では、戦略のパフォーマンスが期待通りにならないことがあります。

• 厳格な戦略順守：戦略をうまく適用し成功するためには、その原則を厳格に守ることが求められます。

オールウェザーポートフォリオの具体的な運用事例

例えば、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックの際、世界の株式市場は大きく下落し、多くの投資家は大損失を経験しました。しかし、この時期にオールウェザーポートフォリオ戦略を採用していた投資家は、全体の損失をある程度抑制することができました。なぜなら、そのポートフォリオは、金や債券など、他の資産クラスが含まれていたため、これらの資産クラスがある程度のリターンを提供し、全体の損失を軽減する役割を果たしたからです。

さらに、オールウェザーポートフォリオは、資産配分を定期的に再調整（リバランス）することが求められます。これにより、各資産クラスの割合が定められた範囲内に保たれ、投資家は自身のリスク許容度を維持することができます。例えば、株式市場が好調な時期には、株式の割合が上昇し、過度なリスクを負うことを避けるために、他の資産クラスに再投資することが求められます。

このように、オールウェザーポートフォリオは、市場環境が急激に変動するような困難な時期でも、投資家がリスクを管理し、安定したリターンを追求するための強力なツールとなります。ただし、オールウェザーポートフォリオが全てのリスクを防げるわけではなく、市場の変動性や予測不可能なイベントによる損失の可能性は常に存在します。ですから、投資家は自身の投資目標やリスク許容度をしっかりと理解した上で、この戦略を適用することが重要です。