
グーグルのAndroid買収。転機となった2005年の決断
2005年、意外な決断を下したグーグル
2005年、多くの人々はGoogleを広告収益に依存する検索会社として認識していました。しかしこの年、Googleは自社の歴史においておそらく最も重要な買収を行いました。それは、小さなスタートアップ企業であるAndroidの買収でした。当時の報道ではこの買収は大きく取り上げられませんでしたが、後にその影響力は計り知れないものとなりました。
Androidとは?その起源と誕生の背景
Android Inc.は2003年初頭に設立されました。同社の共同設立者であるAndy Rubinは、以前はMSNやAppleでの勤務経験があり、彼のロボット愛から“Android”という愛称を持っていました。Rubinは、最初のスマートフォンの原型とも言えるDanger Hiptopの開発に携わっており、この経験が後にAndroidの開発に役立ちました。

グーグルとAndroid、二つのビジョンの出会い
当初、Android OSはデジタルカメラ用のオペレーティングシステムとして考えられていましたが、携帯電話の市場が拡大する中で、方向性を変える決断がなされ、スマートフォンとしてのAndroidが誕生しました。しかし、その後のAndroid Inc.の経営は難航。資金繰りの困難から経営が行き詰まる中、投資家Steve Perlmanが10,000ドルを提供したことがAndroid Inc.の再出発のきっかけとなりました。
2005年には、AndroidのプロトタイプをGoogleの共同設立者Larry PageとSergey Brinに披露した結果、50万ドルという驚くべき安さでの買収が実現しました。
Androidの成功の背後にある要因と今後の影響
2022年2月時点でのデータによれば、Androidはすべてのスマートフォンの約69.74%で利用されていると言われています。また、2021年5月には月間アクティブデバイスが30億を超えるなど、スマートフォンだけでなく、スマートウォッチやタブレット、スマートTVなど、さまざまなデバイスでの利用が拡大しています。
Googleのこの買収は、単なる検索会社から、世界をリードするテクノロジー企業へと変貌させる原動力となりました。この買収を振り返ることで、企業の戦略的な決断がどれほどの影響を持つかを再認識することができます。
グーグルの買収の中で最も成功した決断
GoogleがAndroidをたったの5,000万ドルで買収したことは、その後の17年間の買収と比較しても驚異的です。実際、GoogleはAndroidの買収に合計で1億3,000万ドルしか使っていません。一方、わずか1年以上後のYouTubeの買収には驚くべき16億5,000万ドルを支払っているのです。どちらもGoogleにとっては非常に重要な買収となりましたが、Androidの買収は最も成功したものといえるのではないでしょうか。
グーグルの失敗と進行中の買収
しかし、Googleのすべての買収が成功したわけではありません。2011年の巨額な125億ドルのMotorolaの買収は、Googleの最大の失策の一つとしてしばしば挙げられます。Motorolaはわずか3年以上後に29億ドルでLenovoに売却されました。
Googleの買収の中には、まだ進行中とも言えるものもあります。2014年に32億ドルで買収したNest Labsは、スタートが遅かったものの、GoogleとNestのデバイスを一つのブランドの下に統合する動きによって、良好な結果をもたらす可能性があります。また、最近21億ドルで買収したFitbitも注目をあびています。
Android買収の驚異的なROI
それにもかかわらず、GoogleがAndroidへの投資で得たリターンを超えるものを再び得ることは、非常に難しいでしょう。この事例から、企業が将来の成長のために投資や買収を行う際のリスクとリターンを考慮することの重要性が浮かび上がってきます。過去を振り返り、成功と失敗の教訓を学び取ることで、より賢明な経営判断を下す手助けとなることでしょう。
投稿日:2024-02-09
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